『WHITE ALBUM2 〜closing chapter〜』感想。
2011年12月22日発売のLeafの『WHITE ALBUM2 〜closing chapter〜』のレビュー・感想です。
昨年の最大級のビッグタイトルをやっとクリアしました。おそらくプレイ時間は「introductory chapter」も含めて50時間近いと思いますが、本当に最後まで飽きさせないシナリオ・演出にゾクゾクしました。全編を通しての完成度の高さだけで言うなら、間違いなく歴代トップクラスの大作でしょう。何年かぶりに美少女ゲームの見方が変わったような気さえします。

冷たい風を震わせて、歌が聴こえてきた――
夕暮れのキャンパスに、誰もいない学食に、寂しげな校舎の窓辺に。
三年前に凍らせたはずのあの歌が。
情熱に突き動かされ、純粋な想いを綴った、欺瞞の歌が溶けてゆく。
あの、三人だった冬も今は遠く、
一人と一人の季節を何度も繰り返し。
続きは、そんな晩秋。
あの時 引きちぎろうとした絆の、醜い傷痕が乾くこともなく、
けれど、何かが変わる予感とともに始まっていく。
寂しい二つの旋律は、互いを惹きつけ傷つけて、
そしてまた、新たな旋律を呼び寄せる。
もうすぐ、新しい冬が来る。
あのひとといられない、そしてあいつのいない冬が。
ホワイトアルバムなんて知らない。
だって、もう何も歌えない。
届かない恋なんてしない。
だって、もう人を愛せない。
(公式サイトストーリー紹介より)
目次
1. はじめに
2. 全体評
3. 全体の感想
4. 各ルートごとの感想
5. まとめ
1. はじめに
今までも過去作のレビューは1つの記事で書いてきましたが、今回は作品自体が大作ということもあって、感想が長くなってしまったため、大幅に形式を変更してみます。この形式は今回きりになるかもしれませんが、今後も大作をプレイした際には用いることがあるかもしれません。
今回の『WHITE ALBUM2』は全体でプレイ時間が50時間近くあり、この手のゲームとしては屈指のボリュームを誇っており、しかもただ長いだけの作品ではないために、なんとか全体を見通しつつ、可能な限りの感想を取り込みたいと考えています。
2. 全体評
| シナリオ | グラフィック | キャラクター | サウンド | システム | 演出 | オリジナリティ | Hシーン |
| A+ | A- | B+ | A+ | A- | A+ | B+ | B |
総合評価:94点。
(1) シナリオ 『WHITE ALBUM』の名を冠するだけあって、メインテーマは必然的に使い古された「三角関係」なのですが、この題材が様々にアレンジされた形で巧みにストーリーを紡いでいます。伏線の手腕、絶妙な言い回しによって見事にこのテーマを描き切っていると思います。
そして、何よりもシナリオに関しては、「プレイヤーを飽きさせない」という最難関の課題をクリアしているところがまた見事です。どのルートでも、思わず目をそむけたくなるような展開の連続ですが、それでも目を離すわけにはいかない、どうしてもぐいぐいと引きこまれてしまう、読者を挫折させるかどうかのギリギリの綱渡りを成功させている。一歩間違えれば多くの脱落者が出てしまう、敢えてそのギリギリを渡る緊張感が逆に人を惹きつけます。
(2) グラフィック 「introductory chapter」とは違い、複数の方が原画を担当されていますが、それによる絵のバラつきなどはあまりないと思います。立絵で少し気になる所はありましたが、背景CGの美しさは全編通してかなり目立っていたように思います。
(3) キャラクター ストーリーの都合上、全体的に「面倒くさい」キャラが多いと思います。もちろん、それはこの作品をはじめる時点で折り込み済みなのですが、攻略順によってかなりキャラの印象に差が出そうなところが少し残念でした。この作品は、攻略順が固定されていないので、この点は人によって評価が割れそうな気がします。
ただ、この作品におけるキャラクターの凄い所は、単にキャラデザがよくて可愛らしいだけではなく、それがやはり「徹底的に考え抜かれている」ところでしょう。キャラづけにおいても必然性を伴わせるこだわりようがうかがえます。
(4) サウンド 「歌」、「音楽」はこの作品においてきわめて重要な位置を占めているので、かなりのこだわりが感じられます。単純に楽曲が良いだけではなく、その「魅せ方」が非常に凝っています。シーンにマッチするBGM、歌詞が非常にあっている曲をもってきたり、似たような場面で繰り返し同じBGMを使うことにより次の展開を予想させたり……ひとつひとつのBGMにも手を抜かない姿勢が感じられます。
個人的には、「After All」の使いどころが非常ににくくて、何度もやられました。あのイントロ、そして歌詞が、そのシーンに合いすぎていてゾクゾクします。また、物語中で実際に演奏されている場面では、演出との相乗効果により、臨場感が高められています。
声優さんの演技も特に不満な所はないですし、基本的にどのキャラクターも声があっていると思います。
(5) システム コンフィグ周りはすっきりしていて使いやすかったと思います。基本的にシステム面には不満はなかったのですが、いかんせんストーリーが長大なため、既読スキップが速くても、次の選択肢、もしくは未読部分まで時間がかかってしまうのが少し困りものでした。未読まで飛ばせるようにしても良かったような気がします。
(6) 演出 この作品の完成度を高めている最大の要因はこの演出だと思います。とにかくこだわり抜かれた演出が細部にわたってなされており、これによっても飽きの来ない作品に仕上げられていると思います。テキスト、BGM、その両方が凝った演出によって限界までその効果を引き出されていると思います。この作品の素晴らしさのほとんどはこの点に集約されるのではないかと思います。
生易しいわけではないストーリーにさらに演出によって気分が悪くなりそうになりながら、逆に人の注意を惹きつけて、読むのをやめさせない。そういった怖さすら感じます。
(7) オリジナリティ 無印の『WHITE ALBUM』のコンセプトを継承し、それを明らかに意識して作られていながら、最終的には全く違う印象を受けます。個人的にはこの点は相当ポイントが高いです。(無印のそのルートの結末にも納得がいかなかったので。)
ある意味ではありきたりな?「三角関係」をテーマにしながら、その扱いにおいてはかなりの独自性をもっているように思います。
(8) Hシーン シチュエーションも、CGも、声優さんの演技も決して悪くはないと思うのですが、重たいシナリオ展開の中に挟まれているせいで、いくらなんでも雰囲気が良くないですね。ストーリー上どうしようもないこととはいえ、ちょっとしんどい気分になってしまって、それどころじゃないという思いによって集中できないです。終わったあとから見てみると、結構よくできていると思うのですが。
3. 全体の感想
とにかく、総じて完成度が高く、にくい演出とシーンにあったBGMでストーリーに飽きが来ません。ひたすらに、重たいシーンをぶつけてくるのですが、それでも巧みな言葉の運びと伏線の回収によって、ゾクゾクした緊張感が続いて目が離せなくなります。
さらに、単純なストーリーの持って行き方とは違って、回りくどく、どこに向かっているのかわからなくなりそうな、ぎりぎりのところを行くのだけれども、実はすべて予定通りと言う、狙い澄ました感がたまらないです。同様にテキストに関しても、「徹底的に考え抜かれた」セリフや言い回しが、ストーリーの深みを増しています。
そもそも、好き嫌いがはっきり分かれてしまいそうな題材であるにもかかわらず、一般にこれだけの評価を集めているのは伊達じゃないですね。特に演出とシナリオの完成度の高さは史上最高レベルでしょう。
雪菜ルートが何だかんだ言っても一番よくできているのが結局この作品の「強み」ですね。一番メインのヒロインのシナリオがしっかりとしている作品はやっぱり「強い」です。ただ、それに関して、攻略順が固定でないことが、どうだったか。
メインのヒロインのルートを最後に持ってくるように攻略順を固定した方が、個人的には良かったのではないかと思います。どうしても雪菜ルートをやった後では、他のヒロインのルートは蛇足感が出てしまって、十分に楽しめない可能性があるのではないかと思います。
しかし、そうであったとしても最初から最後まで全力で作り上げられたこの作品は、歴代の美少女ゲームの中でもトップクラスの面白さをもっていることは間違いないと思います。最初から全力投球でありながらも、スタミナが切れることなく最後まで投げ抜いた、この完成度の高さは後にも先にも並ぶものがないかもしれません。
4. 各ルートごとの感想
ここでは、基本的に各種のいわゆる「ノーマルエンド」については触れることはなく、各ヒロインの「トゥルーエンド」についての感想を簡単に書くことにします。かずさルートと、雪菜ルートに関しては、もちろんcodaも含めた感想になります。(実は「closing chapter」はエンディング後にさらに「最終章」としてのcodaがあって、雪菜ルートと、そこから派生する形でかずさルートがそこに含まれます。)
(1) 千晶ルート と言いながら、いきなり千晶ルートに関しては、その構成上ノーマルエンドについて書かなければならないのですが。千晶ルートは、1周目にノーマルエンドを迎えた後の2周目でないとトゥルーエンドに進むことができません。
千晶ルートのこの構成は、実はかなり巧みに作られていて、1周目の各シーンでの「裏」ではどうなっていたのかという、謎が次々に明らかにされ、2周目は終始ゾクゾクさせられっぱなしです。
千晶ルートではちょっとしたパロディ要素が多かった気がします。長瀬と言えば、Leaf作品の定番ですし、あの劇も多分『痕』ネタなんでしょうね。過去作品を思い出してちょっと感傷に浸ることができます。このルートでは、千晶がかずさ風に主人公を励ますシーンがお気に入りです。
このルートは「introductory chapter」とのつながりが深いので、初めにやるとより楽しめるかもしれません。ある意味では他のルートよりも「どぎつい」ストーリーなのですが。他のルートにはない独特の世界観にぐいぐい引き込まれて、抜け出せなくなる感じがたまらなく、お気に入りのルートです。
(2) 小春ルート 「小春希」こと小春ちゃんは……かわいいですね、もう本当に。私が単に後輩キャラに弱いだけって話なのかもしれませんけど。ああいうキャラは好きです。
ただ、それを純粋に楽しめるストーリーではないんですが……無理しんどい、やめてって言う感じの……残念ながら誰得感のあるストーリーに。なんというか、予想していたのとは違う方向にぶっ飛んで行ってしまった感じがありますね。個人的にはいわゆる鬱ゲーは得意なのですが(君のぞとか好きですし)、これは流石に……きついなあ。
最後には綺麗にまとめてあるのですが、個人的には一番進めるのがしんどかった(というより、他のルートはさほどしんどくはなかった)ルートです。ラストがあっさりとしているので、全体的には薄味かもしれませんが。
(3) 麻理ルート 麻理さんは……かわいいですね。年m……じゃなくて、仕事のできる大人な女性なわけですが、しぐさが妙に子供っぽかったり、かなり恥ずかしいセリフを言って照れてしまったり。定番っちゃ定番ですが、キャラデザと合わせてかなり魅力的なキャラになっていると思います。麻理さんで言えば、バーのCGが好きですね。雰囲気がよく出ている作品中でも屈指の一枚じゃないかと思います。
麻理ルートの最後は、本当に「ずるい」ですね。そのずるさがたまらなく感動できる、やっぱりすっきりしたエンディングで、麻理ルートのというか、麻理さんの性格から考えてこの終わり方は似合っていたんじゃないかと思います。後述のように若干物足りない所があったルートですが、個人的にはかなり気に入っています。
ただ、小春ルートと麻理ルートは綺麗にまとめてある一方で、他のルートの完成度に比べると見劣りがして、ちょっと印象に残りにくい気がします。どちらもキャラがいいだけに、ちょっと残念でした。
(4) かずさルート かずさルートは「coda」において、雪菜ルートから派生する形で入ることができます。
したがって、どちらを先にクリアするかで、もう一方に対する印象が変わってくるかもしれません。イメージとしては、雪菜ルートがグランドルートとしてこれまでの集大成となっている感じなのに対して、かずさルートは完全にその逆をいく感じです。
かずさルートでは、やはり物語にキレがあり、あのぞくぞくするようなシナリオ展開、言い回し、セリフが続きますね。でも、他のルートとは違ってそれは雪のように上から降ってきて積もっていくのではなくて、地面の下から嫌な音を立てながら這いずり出てくるような感じですが。何か重たいものがのしかかってくるような、ある意味ではこの作品を代表するような雰囲気があるルートです。
個人的には、最後のエンディング後のエピローグがあっさりしすぎていて、物足りなかった気がします。もうちょっと蛇足的に詳しくやってくれても良かった気がします。
(5) 雪菜ルート 雪菜ルートに関しては、流石に雪菜のキャラが面倒くさいと言わざるを得ないと思いますが、それ以上に?周りのサブキャラも面倒くさいのでバランスがとれているというべきか、むしろ、その面倒くささを楽しむルートになっていますね。もちろん、人によってはなかなか受け付けないストーリーかもしれませんが。
メインヒロインのルートにしちゃ随分と薄味で終わってしまうのかなと、エンディングのスタッフロールを見ながら思っていたら、やっぱりそれだけでは終わってくれず、coda:最終章へ。やっぱりまだまだこの程度では収まりがつかないですよね。色んな意味で。なんせ良くも悪くもWHITE ALBUMのタイトルを冠しているんですから。まだまだ三角関係は終わらんよ……何それこわい!冬はまだ続いているんだから……
codaのかずさ可愛いなあ。うん。メガネっ子は全然タイプじゃないんですが、ここまで似合っていると、もはや好みの問題じゃないですね。もちろん、見た目だけでなくて、性格も随分と良いのですけれど。最後の取材のシーンはたまらないですね。そういやその伏線は回収されずに残っていたなあと。ここまで引っ張ってくるとは。あのシーンはBGMとの相性が良すぎて、怖いくらいに好きなシーンの一つです。さらに、coda最終盤のかずさの前編以来の圧倒的な信頼感。あの頼りになるセリフはにくいですね。
そして、エンディングの絵……後日談がそこで何枚かの絵として描かれているのですが、もうどうしようもない。動きもないただの絵なのに、どういった会話があって、それぞれの人物が何を考えているのが嫌と言うほどに伝わってくる。完成度の高さに感じいってしまいます。
5. まとめ
シナリオは全体的に重く、また、各ルートごとにかなりテイストが違うストーリーなのですが、それらが最終的には雪菜ルートで折り重ねられて、いわゆるグランドルートのような形で完成されています。
麻理ルートと小春ルートは、決して悪いストーリーではないと思うのですが、何か他のルートと比べて物足りない所があるという感じがします。他のルートには、何と言うか、こうゾクゾクくるものがあって、恐ろしいほどに飽きない、いや飽きさせてくれない所があります。どんどん深い所へ引っ張られていく感覚のようなモノがあって、ときに吐き気すら覚えるほどです。そういった感覚がこの二つのルートにはなかったかなという意味では、この二つのルートは少し物足りなかったです。
そういったこともあって、やはり攻略順は固定してほしかったと思います。個人的には、千晶ルート→麻理ルート→小春ルート→かずさルート→雪菜ルートの順でプレイするのがよいかなと思います。前の3つは順番を変えてもいいかもしれませんが、雪菜ルートは最後に持ってくるのが一番すっきりした終わり方になると思います。
総合評価としては、94点。文句なしの名作だと思います。見事にテーマである三角関係を描き切った会心のシナリオ、徹底的にこだわり抜いた演出、レベルの高いBGMそれらが互いに上手く働いて、間違いなく2011年を代表する、いや歴代でも屈指の美少女ゲームになっていると思います。
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